台風22号ライ(フィリピン名:オデット)によるセブ島の現状
2021年12月16日の夜、セブ島を含むビサヤ地域の島々を大型の台風が襲いました。
日本でどれほどニュースになっているのかはわかりませんが、セブ島全域は当初の想像を超える被害を受けています。
普段ニュースを見ているとフィリピンに台風があたり洪水が発生している映像などをたまに見かけますよね。
なのでフィリピンは台風がよく来ると思っている方も多いかもしれません。
実は台風の被害がよく報道されているのはマニラ周辺などの北部地域がほとんどで、セブ島を含むビサヤ地域は台風があまり来ないことで知られています。
僕はセブ島に住み始めてもうすぐ4年目になるのですが、セブで台風を経験したことは一度もありませんでした。
今回の記事では、台風22号によってセブがどれほどの被害を受けているのか、現在どうなっているのかを伝えられればと思います。
12月16日の夜
12月15日の時点でもうすぐセブに台風が来るらしいというのは既に知られていました。僕も台風情報をチェックしていたのですが、この時はさほど強い勢力じゃないから大丈夫だろと思っていました。
しかし、16日になると勢力を増しかなり強い台風になっていました。僕は大学時代沖縄に住んでいたことがあるのですが、まさに沖縄の強力な台風といったところ。
僕の会社ではとりあえず16日は在宅勤務とし、翌日台風が去っていたら出勤という事に。多分他の会社でもそんな感じだったと思います。
この日は18時までの在宅勤務を終えるあたりまではさほど風は強くありませんでしたが、19時くらいに晩飯を作り終える頃には風がかなり強くなり、いざ食べようと思った矢先に停電しました。
フィリピンのインフラは日本ほどしっかりとして無いので、台風でなくても普段からたまに停電があります。
この日もあーやっぱ止まったかくらいにしか思わず、スマホのライトを照らし晩飯を平らげ風呂に入って早めに寝ることにしました。
20時を過ぎると風の勢いがさらに強くなってきます。沖縄と台風と同等か、もしくはそれ以上だったかもしれないです。
風の音と共にトタンの剥がれる音、いろんなものが飛んでいき壁に当たる音が聞こえます。いよいよかなりの被害が出るのではと思い始めました。
僕の家は安アパートですが一応コンクリ作りなので、建物に被害はありませんでしたが、部屋が一階なので玄関まで浸水してきました。
浸水はドアの隙間に厚紙をビニール袋で覆ったものを突っ込むことで対処できましたが、僕の家は低地ではないので、他の家はかなり浸水の被害にあったと思われます。
朝になるとやはり電気は復旧しておらず、水道まで止まっていました。
外に出てみるとどこかの家の屋根であろうトタンが転がっていたり、向かいの建物の外壁が崩れたりしていました。
外がどんな状況か気になるしとりあえず会社に行ってみることにしました。
台風22号の被害
台風の甚大な被害を目にして最初にすることが会社に行くというのは悲しき日本人の性でしょうか。
停電に加えインターネットも繋がっていないので、仕事はできないのですが、外の状況と会社のオフィスは無事かどうか確認したかったのです。
オフィスに着くと、まず廊下の天井が全て落ちてきていました。画像がそれです。
この画像だけでも今回の台風の大きさがお分かりいただけるのではないでしょうか。
そしてオフィス内は窓が開いてしまったみたいで、床は水浸しでパソコン数台がデスクから飛ばされていました。
以下で紹介するのは台風被害後に目にしたセブの被害状況です。
何枚か写真を取りましたしたのでそれも掲載します。
道路
バイクで走り出してまず目撃したのは家の近くの商業施設の看板がへし折れているさまでした。看板が電線に引っかかっています。
これを目撃した時、台風の被害の大きさを実感したと同時に、これはしばらく復旧しそうにないなと確信しました。
セブ島には街路樹が多いのですが、かなりの本数が倒れ道を塞いでしまっていました。目的地にたどり着くまで結構回り道をしないといけません。
倒れているのは街路樹だけではありません。電柱が倒れて道路を塞いでいます。
会社の様子を確認した後、インターネットも電話もつながらないので、僕のフィリピン武術の先生の家に直接様子を見に行ってみました。
街路樹や電柱が道を塞いでしまっているため何度も迂回しなくてはならなかったのとそれによる渋滞で、通常30分でつく道のりが1時間以上かかってしまいました。
また、多くのガソリンスタンドが営業できなくなってしまい、ガソリンの争奪戦のような事態になっています。
営業しているガソリンスタンドには長蛇の列ができていて、道を塞いでしまい更に渋滞が悪化しています。
現在のセブの道路状況は、障害物による道路の封鎖と混雑によって通常通り機能しなくなっています。
建物
台風が建物に与えた影響も深刻です。
セブの庶民の家屋は日本とは違い木造のトタン屋根の家がほとんどです。土地柄台風があまり来ないので、大して対策もしていなかったことでしょう。
日本のネットニュースで、17日夜の時点で33万8000人が学校などに避難しているという記事を見かけましたが、ほぼ全て台風により家が飛ばされてしまった人々です。
フィリピンの災害対策当局は、まだ全ての被害を把握しきれていないと発表しているので、この数字より多くの人が家を失ってしまったと思われます。
僕の会社のスタッフも、現在安否の確認が取れているスタッフだけでも2人が家を失いました。
民家だけでは無く、頑丈そうな商業施設なども被害を受けています。
家の近くのガソリンスタンドは屋根ごと飛ばされてしまっていました。
ライフライン
この記事を書いているのが2021年12月18日です。
台風が直撃したのが16日の夜なので2日が経過しましたが、未だにセブ島全域で電気水道のライフラインはストップしたままです。
聞くところによると、セブの電力会社が意図的に全土の電気を止めているそうです。
電柱が倒れたりしていますから、今電気を通したら火災や感電などの事故が相次ぐことでしょう。適切な判断だと思います。
なのでセブ島の住民のほとんどが、現在ろうそくの明かりで生活しています。
ろうそくで生活してみると明かりのありがたみがよりわかりますね。もったいないからこまめにろうそく消したり。
セブ島全土は現在も停電していますが、電気が通っている建物があります。それがオフィスビル、商業施設、裕福層と外国人向けコンドミニアムです。
これらの施設にはジェネレーターと呼ばれる発電機が備え付けられており、停電時は発電機で建物内の電力をまかないます。
自分の会社に発電機が備え付けられている人、コンドミニアムに住んでいる人、もしくはそういった人の知り合いのみが電気を使えるということです。
水道に関してはよくわかりませんが、地域によって通っているところと通っていないところがあるようです。
僕の家の水道もまだ止まったままですが、運よく家の前に井戸があるので身体は何とか洗えています。平成生まれにして生活のため井戸で水を汲みに行く経験ができるとは思わなかったです。
因みに僕の家は安アパートなので当然発電機は付いていません。
今まで家賃にお金をかけるのはもったいないと考えていましたが、コンドミニアムの高い家賃はこういう時の保険も兼ねているいるんだなと実感しました。
店
ライフラインの見出しで前述した通り、発電機が備え付けられている施設の店は台風の被害の前と変わりなく電気が使えます。
なので、今のセブ島では発電機が備え付けられた店だけは通常通り営業しています。
具体的にいうとモール併設などの大型スーパーなどです。昨日僕も行ってみたのですが、意外に混雑はしていませんでした。
皆自分の家を修理したりでスーパーに来る余裕が無いのかもしれません。
僕が行ってみたのがアヤラモールだったのですが、併設されたスーパーは営業していましたがモール自体は閉まっていました。
台風による被害でスーパー以外営業できない状態なのかもしれません。
ローカルの食堂なんかはカセットコンロさえあれば電気が無くても営業できるので、なんとか営業を続けているそうです。
コンビニなど電気が必要だけど発電機が無い店は全て閉まっているのが現状です。
被害にあったフィリピン人は
ライフラインが完全にストップしているため、セブ島の住民ははぼ全員が被災者となってしまいました。
では被害にあったフィリピン人が全員悲しみに打ちひしがれ途方に暮れるのかというと、意外にそうでもありません。
メンタルが強いのか底抜けに明るいだけなのか、笑顔で近所の人同士協力しながら瓦礫を片づけたり、家を修理したりしている人たちが目立ちました。そこに悲壮感のようなものは全く感じません。
どんなに過酷な状況でも周りの人と協力して笑顔で乗り切れるのがフィリピン人の良いところなのかもしれません。
おわりに
今回は僕がいま書けるだけのセブの現状を書きました。
ところで、電気使えないのになんでお前ブログ書けるんだって思った方もいらっしゃるのでは無いでしょうか。
今日もスマホの充電と機材のチェックのために会社に来ていたので、オフィスで書いています。
台風の夜にオフィスの窓が開いてしまったらしく、窓際の僕のデスクにおいてあったパソコンはモニターと共に見事に吹っ飛んでおり、床は水浸しになっていました。
一晩パソコンを乾燥させ、半壊したモニターを組み立て、生きていそうなパーツを組み合わせたら奇跡的に動いてくれたのでブログを書くことができました。
さて、いつになったらセブ島ライフラインは復旧するのか気になるところですが、フィリピンのニュースを見たところまだ復旧の見通しは立っていないようです。
僕の予想ですが早くて1、2週間か下手したら1ヵ月くらいかかってもおかしくないのではと思っています。やはり日本と比べてしまうとインフラが復旧するのは遅いですからね。
フィリピン人の大好きなクリスマスと年越しが光にあふれていることを願います。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
日が落ちるまでには家に帰らなくては。