フィリピン武術:グランドマスターの手と俺の手
前回に続いてスティックの握りに関する話題です。
先日ツイッターでフィリピン武術の修練者と思われる方が手のひらの画像をツイートしているのを見かけました。スティックをたくさん振ったのでしょう、見事にマメができています。
僕の手のひらにもスティックを振ってできたマメというか固くなっている部分があるのですがそこでふと思いました。
ニック先生の手のひらどうなってるんだろう?
マメができる位置というのはスティックを握るときに圧力がかかっているということです。
グランドマスターの手のひらを見れば、マメや固くなっている部分から理想的な握り方を導き出せるのではないだろうか。
と思ったわけです。
この時の僕は正解への近道を見つけたとテンションが上がっていました。
勝ったな。
そう確信しながら次の練習の時に手を見せてもらうことにしました。
グランドマスターの手と僕の手を見比べた結果が面白かったので記事にしてみました。
フィリピン武術歴5年目自分の手
まずは参考にフィリピン武術歴が5年目になる僕の手のひらがどんな感じか説明します。
中指、薬指、小指の付け根部分に同じくらいの大きさのマメが並んでいます。結構固いです。
人差し指の根元は指一本分の幅を開けてマメができています。ここはたまに皮が剥がれます。恐らく一番力が入っているポイントです。
おおよそスティックを握っているラインに沿って均等に並んでいるので、自分でいうのはなんですが綺麗にマメができているのではないかと思います。
フィリピン武術をやっている人の平均的な手と同じかどうかはわかりませんが、僕の手のひらはこんな感じです。
グランドマスターの手
ある日の練習終わりに聞いてみました。
「先生、手のひらを見せてください」
ここまで読めば察しの良い人や武術歴の長い人はもうオチがわかっているかもしれません。
そうです。グランドマスター手にはマメどころか固くなっている部分さえありませんでした。
触ってみても特別なことは何もない、フィリピン武術どころか武術や格闘技など何もやってなさそうな柔らかい手がそこにはありました。強いて言うなら肌が綺麗でした。
予想と違ったため少し困惑したのを覚えています。
「僕の手のひらはこことここにマメがあります。先生は長年スティックを続けてきたのになぜマメが無いのですか?何か特別な握り方があるのでしょうか?」
せめてマメができない握り方を聞きたいと思い質問してみました。しかしまたもや答えは意外なものでした。
「わからん」
いや、わからんて。
理想的なスティックの握りへの近道を見つけたと思ったらとんでもない迷宮に迷い込んでしまったと思いました。しかしこの後先生は少しだけヒントをくれました。
「お前今いくつだっけ?」
「27です」
「お前くらいの歳の頃は手がマメだらけだったよ。スティックを振っていて手のひらの皮がよく剥けた。いつごろからかもう覚えていないけど、ある時気づいたらどれだけスティックを振り続けてもマメができることはなくなっていたんだ」
なるほど、長年スティックを振り続けないとたどり着けない領域というわけか。
コツとか近道は見つからなかったけど、ゴールがどんな形をしているかは知ることができました。
前にもそんな話あったな
今回の記事を書いていて思い出したのですが、東京に住んでいた頃にお世話になっていたアーニスクラブ東京の先生とも似たような会話をしたことがしたことがあったんですよ。
約4年前なのではっきりとは覚えていませんが、アーニスクラブ東京の先生はスティックを振っていて手にマメができたことが無いそうです。
その先生はフィリピン武術歴も長いですが、長年日本の古武道をやっていたそうです。フィリピン武術を始める前から武器を扱うことに慣れていたのでしょう。だからスティックを振っていて手にマメができたことが無いということだったと思います。
思い返せばあの時もっとちゃんと握り方について深く聞いておけばよかったです。
この回想で得られた結論も地道に練習を積み重ねるしかないということ、シンプルに僕の練習が足りてないということでした。
おわりに
今回の記事は理想的なスティックの握りへの近道を見つけたと思い意気揚々と蓋を開けたら思ってたのと違う。やっぱり地道に練習を積み重ねていくしかないわ。というお話しでした。
ただ当初の想像と違っていただけで、”理想的な握り”の手がどういう手なのか確認することができました。目指すべきゴール地点を知ることができただけでも大きな収穫でした。
もしかしたら他の武術をやってきた人や、シンプルに才能がある人などはすぐにマメができなくなったり、アーニスクラブ東京の先生のようにそもそも最初からマメができない人もいるのかもしれませんね。
恐らく手にマメができないメカニズムは絶妙な脱力なんじゃないかなと思います。
スティックがすっぽ抜けたりしない程度に必要最低限の力で握る感じでしょうか。わかっていてもなかなかできないですが。
手のひらからマメが消えるその日まで、スティックを振り続けていきたいと思います。