台風22号ライ(フィリピン名:オデット)によるセブ島の現状

f:id:arnis-life:20211218213344j:plain

2021年12月16日の夜、セブ島を含むビサヤ地域の島々を大型の台風が襲いました。

 

日本でどれほどニュースになっているのかはわかりませんが、セブ島全域は当初の想像を超える被害を受けています。

 

普段ニュースを見ているとフィリピンに台風があたり洪水が発生している映像などをたまに見かけますよね。

 

なのでフィリピンは台風がよく来ると思っている方も多いかもしれません。

 

実は台風の被害がよく報道されているのはマニラ周辺などの北部地域がほとんどで、セブ島を含むビサヤ地域は台風があまり来ないことで知られています。

 

僕はセブ島に住み始めてもうすぐ4年目になるのですが、セブで台風を経験したことは一度もありませんでした。

 

今回の記事では、台風22号によってセブがどれほどの被害を受けているのか、現在どうなっているのかを伝えられればと思います。

 

12月16日の夜

12月15日の時点でもうすぐセブに台風が来るらしいというのは既に知られていました。僕も台風情報をチェックしていたのですが、この時はさほど強い勢力じゃないから大丈夫だろと思っていました。

 

しかし、16日になると勢力を増しかなり強い台風になっていました。僕は大学時代沖縄に住んでいたことがあるのですが、まさに沖縄の強力な台風といったところ。

 

僕の会社ではとりあえず16日は在宅勤務とし、翌日台風が去っていたら出勤という事に。多分他の会社でもそんな感じだったと思います。

 

この日は18時までの在宅勤務を終えるあたりまではさほど風は強くありませんでしたが、19時くらいに晩飯を作り終える頃には風がかなり強くなり、いざ食べようと思った矢先に停電しました。

 

フィリピンのインフラは日本ほどしっかりとして無いので、台風でなくても普段からたまに停電があります。

 

この日もあーやっぱ止まったかくらいにしか思わず、スマホのライトを照らし晩飯を平らげ風呂に入って早めに寝ることにしました。

 

20時を過ぎると風の勢いがさらに強くなってきます。沖縄と台風と同等か、もしくはそれ以上だったかもしれないです。

 

風の音と共にトタンの剥がれる音、いろんなものが飛んでいき壁に当たる音が聞こえます。いよいよかなりの被害が出るのではと思い始めました。

 

僕の家は安アパートですが一応コンクリ作りなので、建物に被害はありませんでしたが、部屋が一階なので玄関まで浸水してきました。

 

浸水はドアの隙間に厚紙をビニール袋で覆ったものを突っ込むことで対処できましたが、僕の家は低地ではないので、他の家はかなり浸水の被害にあったと思われます。

 

朝になるとやはり電気は復旧しておらず、水道まで止まっていました。

 

外に出てみるとどこかの家の屋根であろうトタンが転がっていたり、向かいの建物の外壁が崩れたりしていました。

 

外がどんな状況か気になるしとりあえず会社に行ってみることにしました。

 

台風22号の被害

f:id:arnis-life:20211218212816j:plain

台風の甚大な被害を目にして最初にすることが会社に行くというのは悲しき日本人の性でしょうか。

 

停電に加えインターネットも繋がっていないので、仕事はできないのですが、外の状況と会社のオフィスは無事かどうか確認したかったのです。

 

オフィスに着くと、まず廊下の天井が全て落ちてきていました。画像がそれです。

 

この画像だけでも今回の台風の大きさがお分かりいただけるのではないでしょうか。

 

そしてオフィス内は窓が開いてしまったみたいで、床は水浸しでパソコン数台がデスクから飛ばされていました。

 

以下で紹介するのは台風被害後に目にしたセブの被害状況です。

何枚か写真を取りましたしたのでそれも掲載します。

 

道路

f:id:arnis-life:20211218212432j:plain

バイクで走り出してまず目撃したのは家の近くの商業施設の看板がへし折れているさまでした。看板が電線に引っかかっています。

 

これを目撃した時、台風の被害の大きさを実感したと同時に、これはしばらく復旧しそうにないなと確信しました。

 

f:id:arnis-life:20211218213200j:plain

セブ島には街路樹が多いのですが、かなりの本数が倒れ道を塞いでしまっていました。目的地にたどり着くまで結構回り道をしないといけません。

 

f:id:arnis-life:20211218213237j:plain

倒れているのは街路樹だけではありません。電柱が倒れて道路を塞いでいます。

 

会社の様子を確認した後、インターネットも電話もつながらないので、僕のフィリピン武術の先生の家に直接様子を見に行ってみました。

 

街路樹や電柱が道を塞いでしまっているため何度も迂回しなくてはならなかったのとそれによる渋滞で、通常30分でつく道のりが1時間以上かかってしまいました。

 

また、多くのガソリンスタンドが営業できなくなってしまい、ガソリンの争奪戦のような事態になっています。

 

営業しているガソリンスタンドには長蛇の列ができていて、道を塞いでしまい更に渋滞が悪化しています。

 

現在のセブの道路状況は、障害物による道路の封鎖と混雑によって通常通り機能しなくなっています。



建物

f:id:arnis-life:20211218212530j:plain

台風が建物に与えた影響も深刻です。

 

セブの庶民の家屋は日本とは違い木造のトタン屋根の家がほとんどです。土地柄台風があまり来ないので、大して対策もしていなかったことでしょう。

 

日本のネットニュースで、17日夜の時点で33万8000人が学校などに避難しているという記事を見かけましたが、ほぼ全て台風により家が飛ばされてしまった人々です。

 

フィリピンの災害対策当局は、まだ全ての被害を把握しきれていないと発表しているので、この数字より多くの人が家を失ってしまったと思われます。

 

僕の会社のスタッフも、現在安否の確認が取れているスタッフだけでも2人が家を失いました。

 

f:id:arnis-life:20211218212654j:plain

民家だけでは無く、頑丈そうな商業施設なども被害を受けています。

f:id:arnis-life:20211218212605j:plain

家の近くのガソリンスタンドは屋根ごと飛ばされてしまっていました。



ライフライン

この記事を書いているのが2021年12月18日です。

 

台風が直撃したのが16日の夜なので2日が経過しましたが、未だにセブ島全域で電気水道のライフラインはストップしたままです。

 

聞くところによると、セブの電力会社が意図的に全土の電気を止めているそうです。

 

電柱が倒れたりしていますから、今電気を通したら火災や感電などの事故が相次ぐことでしょう。適切な判断だと思います。

 

なのでセブ島の住民のほとんどが、現在ろうそくの明かりで生活しています。

 

ろうそくで生活してみると明かりのありがたみがよりわかりますね。もったいないからこまめにろうそく消したり。

 

セブ島全土は現在も停電していますが、電気が通っている建物があります。それがオフィスビル、商業施設、裕福層と外国人向けコンドミニアムです。

 

これらの施設にはジェネレーターと呼ばれる発電機が備え付けられており、停電時は発電機で建物内の電力をまかないます。

 

自分の会社に発電機が備え付けられている人、コンドミニアムに住んでいる人、もしくはそういった人の知り合いのみが電気を使えるということです。

 

水道に関してはよくわかりませんが、地域によって通っているところと通っていないところがあるようです。

 

僕の家の水道もまだ止まったままですが、運よく家の前に井戸があるので身体は何とか洗えています。平成生まれにして生活のため井戸で水を汲みに行く経験ができるとは思わなかったです。

 

因みに僕の家は安アパートなので当然発電機は付いていません。

 

今まで家賃にお金をかけるのはもったいないと考えていましたが、コンドミニアムの高い家賃はこういう時の保険も兼ねているいるんだなと実感しました。

 

ライフラインの見出しで前述した通り、発電機が備え付けられている施設の店は台風の被害の前と変わりなく電気が使えます。

 

なので、今のセブ島では発電機が備え付けられた店だけは通常通り営業しています。

 

具体的にいうとモール併設などの大型スーパーなどです。昨日僕も行ってみたのですが、意外に混雑はしていませんでした。

 

皆自分の家を修理したりでスーパーに来る余裕が無いのかもしれません。

 

僕が行ってみたのがアヤラモールだったのですが、併設されたスーパーは営業していましたがモール自体は閉まっていました。

 

台風による被害でスーパー以外営業できない状態なのかもしれません。

 

ローカルの食堂なんかはカセットコンロさえあれば電気が無くても営業できるので、なんとか営業を続けているそうです。

 

コンビニなど電気が必要だけど発電機が無い店は全て閉まっているのが現状です。

 

被害にあったフィリピン人は

ライフラインが完全にストップしているため、セブ島の住民ははぼ全員が被災者となってしまいました。

 

では被害にあったフィリピン人が全員悲しみに打ちひしがれ途方に暮れるのかというと、意外にそうでもありません。

 

メンタルが強いのか底抜けに明るいだけなのか、笑顔で近所の人同士協力しながら瓦礫を片づけたり、家を修理したりしている人たちが目立ちました。そこに悲壮感のようなものは全く感じません。

 

どんなに過酷な状況でも周りの人と協力して笑顔で乗り切れるのがフィリピン人の良いところなのかもしれません。

 

おわりに

今回は僕がいま書けるだけのセブの現状を書きました。

 

ところで、電気使えないのになんでお前ブログ書けるんだって思った方もいらっしゃるのでは無いでしょうか。

 

今日もスマホの充電と機材のチェックのために会社に来ていたので、オフィスで書いています。

 

台風の夜にオフィスの窓が開いてしまったらしく、窓際の僕のデスクにおいてあったパソコンはモニターと共に見事に吹っ飛んでおり、床は水浸しになっていました。

 

一晩パソコンを乾燥させ、半壊したモニターを組み立て、生きていそうなパーツを組み合わせたら奇跡的に動いてくれたのでブログを書くことができました。

 

さて、いつになったらセブ島ライフラインは復旧するのか気になるところですが、フィリピンのニュースを見たところまだ復旧の見通しは立っていないようです。

 

僕の予想ですが早くて1、2週間か下手したら1ヵ月くらいかかってもおかしくないのではと思っています。やはり日本と比べてしまうとインフラが復旧するのは遅いですからね。

 

フィリピン人の大好きなクリスマスと年越しが光にあふれていることを願います。

 

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

日が落ちるまでには家に帰らなくては。

 

フィリピン武術:グランドマスターの手と俺の手

f:id:arnis-life:20211206183743j:plain

前回に続いてスティックの握りに関する話題です。

 

先日ツイッターでフィリピン武術の修練者と思われる方が手のひらの画像をツイートしているのを見かけました。スティックをたくさん振ったのでしょう、見事にマメができています。

 

僕の手のひらにもスティックを振ってできたマメというか固くなっている部分があるのですがそこでふと思いました。

 

ニック先生の手のひらどうなってるんだろう?

 

マメができる位置というのはスティックを握るときに圧力がかかっているということです。

 

グランドマスターの手のひらを見れば、マメや固くなっている部分から理想的な握り方を導き出せるのではないだろうか。

 

と思ったわけです。

 

この時の僕は正解への近道を見つけたとテンションが上がっていました。

 

勝ったな。

 

そう確信しながら次の練習の時に手を見せてもらうことにしました。

 

グランドマスターの手と僕の手を見比べた結果が面白かったので記事にしてみました。

 

フィリピン武術歴5年目自分の手

まずは参考にフィリピン武術歴が5年目になる僕の手のひらがどんな感じか説明します。

 

中指、薬指、小指の付け根部分に同じくらいの大きさのマメが並んでいます。結構固いです。

 

人差し指の根元は指一本分の幅を開けてマメができています。ここはたまに皮が剥がれます。恐らく一番力が入っているポイントです。

 

おおよそスティックを握っているラインに沿って均等に並んでいるので、自分でいうのはなんですが綺麗にマメができているのではないかと思います。

 

フィリピン武術をやっている人の平均的な手と同じかどうかはわかりませんが、僕の手のひらはこんな感じです。

 

グランドマスターの手

ある日の練習終わりに聞いてみました。

 

「先生、手のひらを見せてください」

 

ここまで読めば察しの良い人や武術歴の長い人はもうオチがわかっているかもしれません。

 

そうです。グランドマスター手にはマメどころか固くなっている部分さえありませんでした。

 

触ってみても特別なことは何もない、フィリピン武術どころか武術や格闘技など何もやってなさそうな柔らかい手がそこにはありました。強いて言うなら肌が綺麗でした。

 

予想と違ったため少し困惑したのを覚えています。

 

「僕の手のひらはこことここにマメがあります。先生は長年スティックを続けてきたのになぜマメが無いのですか?何か特別な握り方があるのでしょうか?」

 

せめてマメができない握り方を聞きたいと思い質問してみました。しかしまたもや答えは意外なものでした。

 

「わからん」

 

いや、わからんて。

 

理想的なスティックの握りへの近道を見つけたと思ったらとんでもない迷宮に迷い込んでしまったと思いました。しかしこの後先生は少しだけヒントをくれました。

 

「お前今いくつだっけ?」

 

「27です」

 

「お前くらいの歳の頃は手がマメだらけだったよ。スティックを振っていて手のひらの皮がよく剥けた。いつごろからかもう覚えていないけど、ある時気づいたらどれだけスティックを振り続けてもマメができることはなくなっていたんだ」

 

なるほど、長年スティックを振り続けないとたどり着けない領域というわけか。

 

コツとか近道は見つからなかったけど、ゴールがどんな形をしているかは知ることができました。

 

前にもそんな話あったな

今回の記事を書いていて思い出したのですが、東京に住んでいた頃にお世話になっていたアーニスクラブ東京の先生とも似たような会話をしたことがしたことがあったんですよ。

 

約4年前なのではっきりとは覚えていませんが、アーニスクラブ東京の先生はスティックを振っていて手にマメができたことが無いそうです。

 

その先生はフィリピン武術歴も長いですが、長年日本の古武道をやっていたそうです。フィリピン武術を始める前から武器を扱うことに慣れていたのでしょう。だからスティックを振っていて手にマメができたことが無いということだったと思います。

 

思い返せばあの時もっとちゃんと握り方について深く聞いておけばよかったです。

 

この回想で得られた結論も地道に練習を積み重ねるしかないということ、シンプルに僕の練習が足りてないということでした。

 

おわりに

今回の記事は理想的なスティックの握りへの近道を見つけたと思い意気揚々と蓋を開けたら思ってたのと違う。やっぱり地道に練習を積み重ねていくしかないわ。というお話しでした。

 

ただ当初の想像と違っていただけで、”理想的な握り”の手がどういう手なのか確認することができました。目指すべきゴール地点を知ることができただけでも大きな収穫でした。

 

もしかしたら他の武術をやってきた人や、シンプルに才能がある人などはすぐにマメができなくなったり、アーニスクラブ東京の先生のようにそもそも最初からマメができない人もいるのかもしれませんね。

 

恐らく手にマメができないメカニズムは絶妙な脱力なんじゃないかなと思います。

 

スティックがすっぽ抜けたりしない程度に必要最低限の力で握る感じでしょうか。わかっていてもなかなかできないですが。

 

手のひらからマメが消えるその日まで、スティックを振り続けていきたいと思います。

 

フィリピン武術:剣術と棒術[スティックの握り方の違い]

f:id:arnis-life:20211109180850j:plain

※画像はイメージです。実際の記事の内容とは異なります。

 

以前、僕にとってフィリピン武術の先輩にあたる方と久しぶりに連絡を取りました。そこで過去に練習した時の動画を見返していたのですが面白いことに気が付が付きました。

 

フィリピン武術の中でも、剣術流派と棒術流派でスティックの握り方が全く違っていたのです。

 

真逆だったと言ってもいいかもしれません。

 

剣と棒では全く性質が異なるので、そんなの当り前じゃないかと思う人もいるかもしれませんが、僕は今まで深く考えた事が無かったので、個人的には面白い発見でした。

 

剣術流派と棒術流派

フィリピン武術には練習で使うスティックを剣に見立てて練習する流派と、スティックをそのまま武器として使うことを想定した流派があります。

 

剣術と棒術、どちらの技術も含んでいる流派やナイフ術が中心の流派などもあるので、必ずどちらかに振り分けられるというものではありませんが、わかりやすく大きく分けるとするならこの2つになるのかなと。

 

剣術流派の例を上げると、アバニコトレスプンタスやカリスイラストリシモなど。

 

棒術流派はバリンタワクやドセパレスなどですね。

 

モダンアーニスは伝統的な剣術のドリルとモダンな棒術の技術、バランスよくどちらも含んでいる印象。

 

あくまでどちらの技術に主眼を置いているかというお話ですが、今回のテーマ上剣術流派と棒術流派と2つに分けてお話ししていきます。

 

全て同じフィリピン武術であり、材質も長さも同じスティックを使って稽古するのですが、剣術と棒術で握りが違うのです。

 

今回は流派の特徴によって変わるスティックの握り方について書きました。

 

棒術の握り方

僕が今習っているバリンタワクは棒術流派なので、棒術を先に解説したいと思います。

 

バリンタワクの握り方は、人差し指から小指まで、4本の指で第一関節から巻き込むようにスティックを握るように教わりました。4本の指でしっかり握ったスティックを最後に親指で固定します

 

棒術想定の流派だと、近接戦の間合いではディスアームが決まる確率が高くなります。

 

パラカウでは関節技を駆使したものだけでなく、不意を突いて相手のスティックをいきなり引っ張るなどシンプルなディスアームも使います。

 

ある程度しっかりスティックを握っていないと相手が急にディスアームをかけてきたときに簡単に取られてしまうため、棒術流派ではスティックはしっかり握るように教わります。

 

とはいえ常に力み過ぎているとスティックが早く触れないのと無駄に体力を消耗してしまいます。動きの妨げにはならないけど簡単にスティックを奪われないように脱力のタイミングとちょうどよい力加減に慣れる必要があります。

 

剣術の握り方

では剣術流派はどうなのでしょうか。

 

僕がセブに来る以前にアバニコトレスプンタスで習ったことを思い出しながら書きます。

 

アバニコトレスプンタスはフィリピンの古流剣術です。練習ではスティックを使いますが、その動きはまさに剣術そのものです。ドリル形式の稽古でも必ず相手にとどめを刺すところまで練習します。

 

そんなアバニコトレスプンタスでは、中指、薬指、小指の3本でスティックを保持します。

 

親指と人差し指はスティックに添えるだけ。

 

棒術ではしっかり握ることが良しとされていましたが、剣術においてはリラックスして力み過ぎないようにすることが大切だそうです。

 

棒術の戦い方と違っていきなり剣を引っ張られてディスアームされるということはないので、その分リラックスして操作性を重視できるのだと思います。

 

剣は棒とは違い相手に触れさえすれば切れるので力を込めなくても致命傷になります。

 

なので過度な力みは一切必要ないということなのでしょう。

 

おわりに

今回は感覚としては以前からわかっていたのかもしれませんが、ちゃんと考えたことがなかったこと。剣術と棒術でこんなに握り方違うんだなあと、思ったことを文字に起こした記事でした。

 

個人的には面白いことに気が付いたと思ったのですが、いかがでしたでしょうか。

 

上記の握り方はバリンタワクとアバニコトレスプンタスの2流派の握りを参考にしているので、もしかしたら他の流派では全然違う握り方があるかもしれません。

 

うちの流派は全然違う握り方だよという方がいらっしゃいましたらぜひ教えてください。

 

ありがとうございました。

 

フィリピン武術流派紹介:ニッケルスティックエスクリマ

f:id:arnis-life:20211021175318j:plain

 

 

フィリピン武術には日本の武術と同じように沢山の流派があるのはご存じでしょうか。

 

フィリピンには7500以上の島があり、そのうち人が住んでいる島は1000以上と言われています。

 

これだけ多くの島々があり、言語や文化が異なります。同じフィリピン武術でも沢山の流派が生まれたのは必然だったのかもしれません。

 

フィリピン武術は日本において未だ知名度は高くないと思いますが、フィリピン武術の一流派となるとさらに知名度は低くなるでしょう。

 

そもそもフィリピン武術に複数の流派があるのも知らない人がほとんどなんじゃないでしょうか。

 

今回の記事では僕が修行中のニッケルスティックエスクリマについて紹介したいと思います。

 

ニッケルスティックエスクリマの公式サイトの文章などを参考に書かせていただきました。

 

フィリピン武術、アーニス、カリ、エスクリマには流派があるということ。そして、ニッケルスティックエスクリマとはどういう流派なのかを知っていただければ幸いです。



ニッケルスティックエスクリ

ニッケルスティックエスクリマは、2003年4月27日にグランドマスターのニック・エリザール先生が設立したバリンタワク系統に属するフィリピン武術の流派および団体です。

 

正式名称は「World Nickelstick Eskrima club」です。

 

フィリピン、アメリカ、ロシア、ヨーロッパ、日本など各国に支部があり、バリンタワクを世界中に普及させたいという思いから名称に「World」という言葉が使われています。

 

「Nickel」はニック先生の名前Nick Elizarに由来しており、「Stick」は単数形とすることでバリンタワクが得意とするシングルスティックスタイルを表しています。

 

フィリピン第二の都市であるセブシティに本部を構えており、コロナウイルスが流行する以前は、毎年のように世界各国から生徒が訪れていました。



GMニック・エリザール

ニック先生は1948年生まれの73歳です。

 

セブ島の南西部にあるロンダという小さな町で生まれ、5歳の時にセブシティに引っ越してきました。この時期に、同じく後のグランドマスターである、ボビー・タボアダ先生と出会い幼少期を共に過ごしたそうです。

 

13歳からボクシングを始め、その後10代のうちに空手とテコンドーを経験しました。

 

優秀な格闘家として評価されていたため、1972年にマルコス大統領による戒厳令布告まではセブで有名な実業家のボディーガードとして雇われていたそうです。

 

1972年、幼馴染のボビー・タボアダ先生からバリンタワクを紹介され、以降共に練習に参加することになります。

 

当時のバリンタワクは「Balintawak International Self Defense Club」と呼ばれており、故ホセ・ヴィラシン氏が会長、故テオフィロ・ベレス氏が副会長、バリンタワクの創設者である故アンション・バコン氏がグランドマスターという組織体制でした。

 

ニック先生とボビー先生はテオフィロ・ベレス氏からバリンタワクを教わっていました。また、この頃のアンション・バコン氏は練習内容と生徒たちのレベルの確認のため練習には参加したが監督のみであり、自分が教えるという事はしていなかったそうです。

 

1976年に一通りの修行を終え、インストラクターとしての活動を開始します。

 

セブシティ、サンボアン、ネグロス島のドゥマゲテ市などでバリンタワクスタイルの普及活動に努めたニック先生は、1979年に再度セブシティに戻りテオフィロ・ベレス氏の元でトレーニングを再開します。

 

この頃からニック先生は自分のグループを作り、隣接するエリアで活動していたボビー先生のグループとたびたび合同でトレーニングを行っていいたそうです。

 

1982年にテオフィロ・ベレス氏が自身のクラブを設立し「TeoVelBalintawak Group」と名付けます。ニック先生は同時にマスターの称号を与えられました。

 

1998,2000年に開催されたWEKAF(World Eskrima Kali Arnis Federation)の世界大会にて、TeoVelBalintawak Groupの代表を務めています。

 

TeoVelBalintawak Groupのマスターとして20年以上に渡り普及活動を行い、2003年に自身のクラブを創立し、「World Nickelstick Eskrima club」と名付けました。

 

現在はセブで最も有名なグランドマスターの1人であり、フィリピン国内の警察、警備会社、大学などでセミナーを行っています。



ニッケルスティックエスクリマのロゴ

ニッケルスティックエスクリマのロゴの意味について解説します。

 

水牛:水牛はフィリピンの国獣で生命力と強さの象徴だそうです。現地の言葉でカラバオと呼ばれています。水牛をロゴに使ったのはTeoVelBalintawak Groupが元祖だそうで、それを継承した形になります。因みにニッケルスティックエスクリマ以外でもバリンタワクスタイルでロゴに水牛が使われているところはみんなTeoVelBalintawakの系統だそうです。

 

天秤:アンション・バコン氏の時代から伝統的にバリンタワクのロゴに使われており、正義とバランスを象徴しています。現代のバリンタワクスタイルでも天秤をロゴに入れているところは多いです。

 

スティック:スティックはバリンタワクで最も使われる武器です。スティックが一本なのはシングルスティックスタイルを表しています。

 

稲妻:バリンタワクスタイルのスピードを象徴しています。

 

星:フィリピンの3つの地域、ルソン、ビサヤ、ミンダナオを表しています。

 

シダの葉:フィリピンにおいてシダの葉は名誉と平和の象徴です。

 

フィリピン国旗:愛国心を表しています。

 

余談ですがフィリピン武術の流派ってまるい形のロゴが多いと思いません?

 

実はフィリピン武術に限った話ではなくフィリピン人はまるいロゴが好きです。

 

初めてフィリピンに行ったときは町中で見かける看板のロゴが全てフィリピン武術のロゴに見えました。ですが実際は全く関係ない政治団体のロゴだったりします。



ニッケルスティックエスクリマの特徴

ニッケルスティックエスクリマは2003年に設立された比較的新しい流派ですが、基本的な練習はホセ・ヴィラシン氏とテオフィロ・ベレス氏から継承した内容をほぼそのまま行っています。

 

ニック先生がボクシング、空手、テコンドーの経験者であることから、荷重移動やステップワーク、素手の技術に現代格闘技の影響を感じます。

 

他のバリンタワクスタイルと同様に、1ブロック1カウンターの原則で12ストライクのパラカウを基礎とし、そこにグルーピングやロッキング、ディスアームを加えて習得していきます。

 

ニック先生の教える内容は非常にシンプルであり、他の武術と比べると技の数自体は少ないと思います。継続して練習していれば6ヵ月~1年程で全てを網羅できるそうです。

 

僕も練習を始めてから1年くらいで技術体系を網羅できました。

 

バリンタワクスタイル自体が、伝統技術の継承よりも決闘で目の前の敵を倒すことを追求して発展してきた流派です。

 

どれだけ多くの技を習得できるかよりも実践で必要な技の精度と威力を重視しているスタイルなのだと思います。

 

また、バリンタワクと聞くとコルト(近い間合い)の技術を重視するスタイルという印象が強いですが、ニッケルスティックエスクリマでは実戦を意識したラルゴ(遠い間合い)の技術も重視しています。

 

戦いは常にラルゴから始まる、スティックファイティングにおいて最も時間を長く使う間合いはラルゴである、というニック先生の教えに基づくものです。

 

主な技術体系

全てを書こうと思うと長くなりすぎてしまうので、代表的なものだけを書いていこうと思います。

 

12ストライク

バリンタワクスタイルの創始者であるアンション・バコン氏が作った、打撃に加えると有効な人体の部位を12分割してターゲット化したものです。

 

現在数多く存在するバリンタワク系の全ての流派で採用されています。

 

バリンタワクスタイルから影響を受けたモダンアーニスでも形を変えて採用されています。

 

攻撃動作12、防御動作12で合わせて24動作になりますが、これを習得するだけでそのままナイフや素手の練習もできます。

 

恐らく他のバリンタワクスタイルも同じだと思うのですが、ニッケルスティックエスクリマで最初に習うのがこの12ストライクです。

 

いきなり24動作を覚えるというのは初心者の人にとっては少し難しく感じるかもしれないですが、ニッケルスティックエスクリマの練習はほぼ12ストライクを基にしたもののみです。

 

例えるなら、12ストライクという皿に後述するグルーピングやディスアームなどの料理を盛り付けていく感じです。

 

12ストライクさえ習得してしまえば他の技術はその延長線上にあるものしか出てこないので習得が簡単です。

 

これに気付いたときは効率よく技術習得ができるシステムに感心しました。

 

グルーピング

グルーピングとはパラカウの中でよく使う12ストライク以外の技を種類ごとにグループにして分けたものです。

 

ホセ・ヴィラシン氏とテオフィロ・ベレス氏が開発しました。

 

元々アンション・バコン氏の感覚的な教え方に頭を悩ませたヴィラシン氏とベレス氏が効率的な教え方を追求し、パラカウの中で行うランダムなテクニックに番号を付けてわかりやすくしたものでした。

 

余談になりますが、バリンタワクにおいてグルーピングシステムを採用している流派はヴィラシン氏かベレス氏の系統です。他系統のバリンタワクにはグルーピングがありません。

 

ニッケルスティックエスクリマのグルーピングは1~7まであり以下のように構成されています。

 

グループ1:スティックをつかむ技術とその解除

グループ2:バッティング、プニョで打つ技術

グループ3:突き、ソンキット

グループ4:アバニコ

グループ5:パンチとトラッピング

グループ6:エルボーと頭突き

グループ7:蹴りとスイープ

 

元々バリンタワクはグループ5まででしたが、ニック先生が6と7を追加しました。

 

とはいえ新しい技術というわけではないらしく、昔からパラカウで練習されてきたけどグルーピングには含まれていなかった技術を追加したもののようです。



ディスアーム

ニッケルスティックエスクリマの基本のディスアームはナンバリングされて呼ばれています。ディスアームNo.1、ディスアームNo.2といった具合です。

 

基本のディスアームはフォアハンドが1~7、バックハンドが1~7+オプション3つ。

 

12ストライクに対応したバッティング&ディスアームという技術もあります。一通り覚えるとパラカウ中いかなるタイミングでもディスアームができるようになります。

 

相手が使う武器がスティックであることを想定して編成されているので、スティックをつかむものなど接近した状態を意識した技術が多いです。

 

コンバットジュードー

 

ニッケルスティックエスクリマでは関節技をコンバットジュードーと呼びます。

 

第二次大戦中、米軍が採用していた格闘術から名前を拝借してきているみたいです。

 

他の流派でいうところのドゥモグですね。

 

コンバットジュードーは1~8+オプション3つ、全て当身から始まる関節技です。

 

昔の映像を見ると7つしかなかったみたいですが、No.6が新たに加わって8つになったみたいです。

 

コンバットジュードーは最初に素手で練習して、慣れてきたらスティックを使ってパラカウの中に組み込んでいきます。

 

ナイフもありますが、めったに練習しません。関節技かける暇があるならナイフで攻撃した方が効率がよいということなのでしょう。



日本で習える場所

バリンタワクスタイルというと、フィリピン以外だとアメリカやヨーロッパのイメージが強いです。

 

日本国内では未だ稽古者が少ないですが、実は習える教室や道場はあります。

 

アーニスクラブ東京

アーニスクラブ東京は僕が日本にいるときにお世話になっていた団体です。

 

中野、高田馬場、下北沢、金町、立川、小金井、日野など都内複数個所でクラスを開催しています。

 

普段はモダンアーニスをメインに練習している団体ですが、毎週ニッケルスティックエスクリマクラスを開催しているそうです。

 

代表の大原先生はニッケルスティックエスクリマのインストラクターの認定を受けており、ニック先生から正式に海外支部として認められています。

 

また、不定期ではありますがニック先生のオンラインセミナーを開催しており、セブの本部から直接指導を受ける機会もあります。

 

実は僕がニッケルスティックエスクリマに出会ったのも、大原先生がセブに練習しに行くのに付いていったのがきっかけでした。

 

アーニスクラブ東京URL:https://www.arnisclub-tokyo.com/

 

沖縄龍伊武館

沖縄龍伊武館は恐らく日本で初めて正式にニッケルスティックエスクリマの支部として活動を始めた団体で、代表のアレッサンドロ先生は僕の兄弟子にあたる方です。

 

アレッサンドロ先生はイタリア出身で武術歴は40年以上。フィリピン武術以外にも沖縄空手詠春拳も指導されています。もちろん日本語も話せます。

 

コロナ禍に入る以前は毎年セブを訪れニック先生から直接指導を受けられていました。

 

現在はヨーロッパを対象としたオンラインセミナーなどを主催されています。

 

毎週火曜日と木曜日にニッケルスティックエスクリマクラスを開催しているようです。

 

公式サイトや動画で見る限り常設道場で設備もかなり整っているようです。

 

僕は以前沖縄に5年ほど住んでいたのですが、次回沖縄を訪れる時はぜひ出稽古にお邪魔したいと思っています。

 

沖縄龍伊武館URL:https://www.ryuibukan.com/

フィリピン武術名前ややこし過ぎ問題|アーニス・カリ・エスクリマ

f:id:arnis-life:20211008134442p:plain


フィリピン武術の名前がアーニス・カリ・エスクリマと3つあるのってややこしいですよね。

 

例えばモダンアーニス、ぺキティティルシャカリ、ニッケルスティックエスクリマなど。

 

流派によって使ってる名称が違います。

 

アーニスっていうフィリピン武術やっています。というと、アーニスっていうのがあるんだねー、カリしか知らないよ。と言われたことがあります。

 

あんまり知らない人からしたら名前が違うのだから同じものだとは思わないかもしれません。

 

名前ややこしい問題は日本において知名度がなかなか上がらない理由の一つなんじゃないかなと思ったりもします。

 

では、そもそもなぜ他の武術と違い名前が3つもあるのでしょうか。

 

最近、日本にも来たことがあるフィリピン武術界隈で有名な先生が、アーニス・カリ・エスクリマという名称は地域差による方言のようなものと解説している記事を読みました。

 

北部はアーニス、中部はエスクリマ、南部はカリと呼ぶと解説されていました。

 

は?エスクリマなんて呼んでる人見たことないが?

 

僕が住んでいるのは中部のセブ島です。住み始めて2年半が過ぎ、ずっとフィリピン武術を習い続けてきたけど、エスクリマなんて呼んでる人は見たことがありません。本当に地域によるちがいなのか。

 

かと言って有名な先生が嘘を言っているとは思えません。

 

なんでだろう、時代の違いなのかなと考えたりもしましたが、よく考えると自分の先生にフィリピン武術の名前について質問したことがなかったのでこれを機に聞いてみました。

 

グランドマスターと呼ばれている先生なら、きっと答えを教えてくれるはず。

 

アーニス・カリ・エスクリマの意味の違いは?

Q:フィリピン武術にはアーニス・カリ・エスクリマと3つの名前がありますが、それぞれに意味の違いはありますか?

 

A:意味の違いは特に無い。3つとも同じ、フィリピン武術を指す言葉。

 

まず初めに質問してみたのは、それぞれに意味の違いがあるのかどうか。

 

僕が日本にいたときから名前は3つあるがそれぞれに意味の違いは無いと聞いていたのでこの認識は間違っていなかったようです。

 

アーニス=カリ=エスクリマという事になります。

 

セブの人はフィリピン武術を何と呼ぶ?

Q:今までセブの人にエスクリマ、もしくはカリと言って通じたことがありません。先生はフィリピン人同士で話すときフィリピン武術を何と呼んでいますか?

 

A:アーニスとも呼ぶけどエスクリマとも呼ぶ。セブのエスクリマドールはどっちも普通に使う。一般人に通じないことがあるのはフィリピン武術が国技として普及していく際にアーニスという名称を使ったから。

 

今まで一般人にアーニスという名称以外通じなかった理由が分かりました。

 

先生はフィリピン人同士で会話する時、アーニスとも呼ぶしエスクリマとも呼ぶとのことです。

 

そして先生以外のセブのエスクリマドール達も、普段からアーニスとエスクリマどちらの名称も使っているとのことでした。

 

なぜ名前が3つあるの?

Q:アーニス・カリ・エスクリマと同じ武術に名前が3つあるのはなぜですか?また、呼び方が違うのは地域差によるものと聞いたのですが本当ですか?

 

A:名前の違いは時代背景によるもの。アーニスという名称はアメリカ統治下になってから浸透したもので、特に欧米人向けにフィリピン武術を指す時に使うイメージがある。北部にフィリピン武術が広がり始めたとき、既にアーニスという言葉が広く使われていたので、北部はアーニスと呼ぶ人が多い。エスクリマはアメリカ統治下時代以前に一般的に使われていた名前で、当時の発音はエスグリマだった。昔のセブの人はエスグリマと呼んでいたので今でもエスクリマという名前が広く使われている。カリは主にミンダナオで使われる言葉。マレーシアなどの人もフィリピン武術をカリと呼ぶらしい。時代背景によって地域差が生まれた。

 

アーニスという名称が欧米人向けに使われるというのは初めて聞きました。僕がアーニスという名称しか耳にしなかったのは外国人だからという理由もあったみたいです。

 

セブではエスクリマという名称が昔から使われ続けてきたので、今でもエスクリマドールはそう呼ぶみたいです。

 

そして、南部のミンダナオではカリと呼ぶ人が多いという事だったので、結果的に北部ではアーニス、中部ではエスクリマ、南部ではカリという形になりました。

 

方言のようなもので地域で呼ばれ方が違うという説は正しかったです。

 

なぜニッケルスティックエスクリマ?

Q:うちの流派はニッケルスティックエスクリマという名前ですが、なぜアーニスではなくエスクリマという名称を選んだのでしょう。特別なこだわりがあったのですか?

 

A:無い。別にニッケルスティックアーニスでもよかったけど、ニッケルスティックエスクリマの方が響きが良くてかっこいいだろ。

 

時代背景により地域で名前が3つになったことがわかりました。ふと、うちの流派は何かこだわりがあってエスクリマという名称を使ているのではと思い聞いてみました。

 

英語版WikipediaではバリンタワクはBalintawak Eskrimaという名称が用いられています。なので伝統的にエスクリマを使うのかなと思っていたら特に無いとのことでした。

 

他の流派には用いている名称にこだわりを持っているところもきっとあるでしょう。

 

ただ、うちには無かったということだそうです。




まとめ

 

結果的に3つ名前があるのは地域差によるものという説は正しかったです。

 

フィリピンには7500以上の島があり、約1000以上の島々に人が住んでいるそうです。海に隔てられた地域が沢山あるのだから名前が地域ごとに変わるのはごく自然な事だったのかもしれません。

 

僕がセブでエスクリマなんて呼ぶ人はいないと思っていたのは、国技として普及する際アーニスという名称が使われたから一般人はアーニスしか名称を知らない。

 

そして、外国人に対してアーニスという言葉を使うエスクリマドールが多いからという理由でした。

 

フィリピン武術の名称が3つあるせいで、ややこしくなってしまうくらいならいっそ統一すればいいのにと思ったこともありました。

 

しかし、3つとも歴史があり各地域で使われてきた言葉なので、特別なこだわりを持っている流派もあります。各流派で伝統的に使っている名称を変えてしまうのは、なんだかもったいない気もするのでこのままの方がいいのかもしれませんね。

 

【基本】ナイフ術における番号を解説します

f:id:arnis-life:20211008150112p:plain


先日
YouTubeを見ていて日本の武術界隈で有名な指導者の方がナイフ術を解説している動画を見つけました。

武術系のYouTuberの中でかなり人気のある方のチャンネルだったので、ナイフ術に興味がある人は見た人も多いんじゃないかと思います。

動画の中でナイフ術を解説する時に1とか8とかの番号が出てきました。

しかし、その番号がなんなのかというのは、危険な技術だから動画に映せないということでその中身は伏せられていました。

ナイフなどの刃物は犯罪に利用される恐れがあります。また、ナイフ術には誰でも見られるような形で公開するには危険な技術というのは実際にあります。

ナイフ術を取り扱う動画で、重要な部分を伏せることはとても配慮があることだと思います。

ただ、ナイフ術における番号とはなんなのかという問の答えは海外のナイフ術を解説している動画を探せばいくらでも出てくるんですよね

知っていたところで犯罪に利用されるような内容でもないので今回記事にしました。

僕はフィリピンでナイフ術も含めた総合武術であるアーニスを修行しているのですが、アーニスのナイフ術にも番号が出てきます

同じナイフ術で番号というからには多分同じものなんじゃないかと勝手に推測しています。

全く違うものであれば申し訳ありませんが、もし同じものなのであれば別に危険な技術ではありません。

今回の記事では僕の知っているナイフ術における番号について紹介します。

※本記事は暴力や武力、犯罪を推奨するものでは一切ございません。

ナイフ術の番号はターゲットポイント

f:id:arnis-life:20211008150244p:plain

ナイフ術における番号の正体は、攻撃することで致命傷を与える部位に番号を付けて分かりやすくしたターゲットポイントです。

アーニスにはターゲットポイントに番号を付けて有効な攻撃方法を練習する流派がいくつかあります。

僕が習っている流派はバリンタワクと呼ばれる系統に属しているのですが、アーニスの中でもターゲットポイントに番号を付けて練習することで有名な流派です。

バリンタワクでは上の画像のように攻撃箇所を12個に分けています。武器によってターゲットが変わることもあり、ナイフの場合、1と2は相手の首になります。

ターゲットポイントの番号を覚えて攻撃方法を練習する場合、基本動作と番号を覚えることから練習が始まります。

なので、バリンタワクにおいて番号は危ない技術ではなく1番最初に習う基本です。

番号は近接格闘術の基本

バリンタワク系統のアーニスの話ですが、攻撃が有効な部位に番号を付けて、攻撃動作とセットで教えることで覚えやすくしています。

これは、ナイフ術に限らずスティックや素手などの近接格闘術全てに共通しています。

最初に12種類の攻撃パターンを習得し、その後に対になる12種類の防御パターンを習得します。

両方のパターンを習得することで、二人一組で12種類の動作をランダムに使った自由攻防の練習ができるるようになります。

常に動き続ける攻防の中で、瞬時に相手の不規則な攻撃をさばいて反撃を打ち込む身体の反応を養います

順手でも逆手でもターゲットは同じ

ナイフ術には細かく分けるといくつかの持ち方がありますが、基本的には順手と逆手の2つになります。同じナイフでも順手と逆手では攻撃方法が異なります。

順手では切ることができても逆手では刺すことしかできない部位もあるからです。

攻撃方法が変わっても、人間のウィークポイントは変わりません。

なので、順手でも逆手でもターゲット同じということです。ナイフの持ち方が変わっても番号はそのまま使います。

ナイフ術以外の武器や素手の練習でも使う

今回紹介した番号を用いた練習はナイフ術以外のスティックや素手でも使います。

アーニスにおいてはスティックの技術をナイフ術や素手に変換しているので、番号を付けて最初に練習するのはスティックです。

最初に12種類のターゲットを覚えるのは少し大変ですが、スティックで一度覚えてしまえばナイフ術や素手などの近接格闘術全ての練習で使えるので覚えるのが簡単になります。

なので、ターゲットポイントに番号を付けるの幅広い近接格闘術を効率的に習得できる画期的な練習方法だと思っています。

ナイフ術は独学より習うべき

今回はナイフ術における番号とはなんなのかを紹介しましたが、最後にナイフ術を独学だけで習得するのはあまりおすすめしないという話をしたいと思います。

冒頭でも書きましたがこの記事を書いたのは、知っていたところで犯罪に利用されるような内容ではないからです。

インターネットネットの情報だけでナイフ術を習っている人と同じレベルになるのはかなり難しいと思います。

ナイフ術は危険な技術であるがゆえに、詳しい内容を解説しているサイトや動画を探してもあまり出てきません。

海外の動画を調べると数は出てきますが重要な部分は伏せられているものが多いです。

また、ナイフ術を教えている人は教えることを生業としているので、持っている全ての技術をインターネットに流す人は多分いないんじゃないかと思います。

それが独学だけでナイフ術を習得するのが難しい理由です。

僕の習っているアーニス以外にも、シラットステマクラヴマガでもナイフを用いた近接格闘術を習えるそうです。

ナイフ術専門のセミナーを開催している団体もあるので、ナイフ術に興味があるなら習いに行ってみることをおすすめします。

インターネットでは見せられない技術を教えてくれるはずです。

 

フィリピンへいつ行けるようになる?|コロナ規制緩和についての現状

f:id:arnis-life:20211008150649j:plain


フィリピンがロックダウンを開始してから約1年と半年が過ぎようとしています。

2020年1月30日にフィリピンで最初の感染者が確認され、同年3月12日からロックダウンが始まりました。

ロックダウンが始まった当初は日本の方が感染者数が多く、「今は日本に帰るよりフィリピンにいた方が安全だ」なんて言われていたので、誰もが長くても1か月くらいで終わるだろうと考えていました。

世界最長のロックダウンになるとも知らずに。。。

今現在もフィリピンへの渡航は厳しい制限が続いており、条件を満たした人しか入国が許可されていません。

ロックダウンが始まってからは、政府の認めた長期滞在向けビザを保有していない人の入国は一度も許可されていません。

留学生や移住希望者、フィリピンに家族もしくは恋人がいる人、フィリピンに武術修行に行きたい人にとっては、いつになったらフィリピンに行けるようになるのか、規制緩和はいつになるのか、かなり気になるところじゃないでしょうか。

結論から言うといつになったらフィリピンに行けるのか、はっきりとしたことは誰にもわかりません。外国人観光客の受け入れを再開するかどうか決めるのは中央政府です。

なので今回の記事はフィリピン政府の今までの動向と長年フィリピンに住んでいる知人の話、フィリピンの新聞やニュースの情報などをまとめた予想に過ぎません。

ここに書いてあることを鵜呑みにするのではなく、今フィリピンの現状はこんな感じで、こんな噂が流れていて、現地に住んでいる日本人はこう考えているというような内容なので、参考程度に読んでくださいね。

フィリピンへの渡航は今も厳しく制限されている

冒頭でも書きましたが、今現在も外国人のフィリピンへの入国は厳しく制限されています。現在入国できる外国人は以下の条件を満たしている人のみです。

  • フィリピン国籍を持つ重国籍者
  • バリクバヤンプログラムの該当者(フィリピン国籍の配偶者と同行など)
  • フィリピン国籍者の配偶者または親、子供
  • 永住権保有
  • 駐在などで渡航する外国政府職員
  • 貿易産業省、経済特区庁などに推薦を受けた外国人
  • 外国籍の船員(船員の交代を目的とした入国に限る)
  • 有効な特別(非移民)ビザの保有
  • IATF決議98号により入国を許可された外国籍者
  • 9Gビザ(労働ビザ)ならびに47A2ビザの発給資格を有する外国籍者

上記に該当する外国人であっても、通常時と異なり、到着時に14日間の自主隔離が必要です。最初の10日間は検疫施設で、残りの4日間は自宅で過ごすことになります。

ここでいう検疫施設とは自分で予約した海外渡航者を受け入れているホテルなどの宿泊施設の事です。

最近、フィリピン政府が認めた国からの渡航であれば、ワクチン接種の証明書を提示すると隔離機関が7日間に短縮されるプログラムが始まりました。しかし、残念ながら日本はその国のリストに入っていませんでした。

実は僕を含む在比日本人は、フィリピンからの出国に関して何の規制もありません。帰ろうと思えばいつでも日本に帰ることができるのですが、問題はフィリピンに戻るときです。

日本に入国する際の自主隔離とフィリピンに入国する際の自主隔離で、隔離期間だけでほぼ1か月になります。

僕の少ない有給ではとても足りません。そしてフィリピンはすぐに法律が変わるため、日本滞在中に法律が変わることも十分にあり得ます。リスクの高い博打です。

なので、今フィリピンに住んでいる日本人は一時帰国したくても簡単にはできない状態です。

フィリピンのワクチン接種状況

この記事を書いたのが2021年7月27日になりますが、現在のフィリピンにおけるワクチンの接種率は、1回目の接種を終えた人が総人口の10.4%。2回目の接種を終えた人が総人口の5.8%です。政府は今年中に接種率70%を目標にしているのですが厳しいですね。

なかなかワクチン接種が進まないことに中央政府も焦りを感じていて、ワクチン接種者に抽選で家一軒や牛一頭プレゼントなどの企画で接種促進に勤めているとのことです。牛一頭当たっちゃったらどうすりゃいいんだ。

国民全員にワクチン接種を強制するという案も出てきており、セブ市の隣、マクタン国際空港があるラプラプ市では、ワクチン接種を終えた証明書が無い人はスーパーマーケットやショッピングモールなどの公共施設の利用を禁止する条例が8月25日から施行されます。

セブ市内の今の状況

今現在のセブがどんな感じになっているのかというと、以前は沢山いた外国人観光客の姿が消えただけで、ほとんどロックダウン前と変わらない日常に戻りつつあるように感じます。

未だに規制は続いているので、営業が止まったままの施設や店もあります。営業が停止している業種は僕が知る限りだと以下の通りです。

  • 夜系の店(キャバクラみたいなやつ)
  • スポーツジム(人数制限を設けて営業しているところも)
  • カラオケ
  • 学校
  • 映画館(規制と緩和を繰り返している)
  • 格闘技のジム(場所によるが柔術とかはさすがに閉まってる)

以前と比べると規制はだいぶ緩和され、公共交通機関やレストランなどはもう復活しています。規制が緩和されてできることが増えたのは喜ばしいことなのですが、規制が緩和されるたびに感染者がまた増えるというのを繰り返している気がします。

はっきり言ってフィリピン人はもうロックダウンに飽きています。ロックダウンが始まった当初は、国民全員でこの危機を乗り越えようという雰囲気があった気がします。

子供の頃、台風が来た時なんかテンション上がるみたいな感じもありました。皆外出を控えてたし、店はどこも自粛していて、コロナと戦う団結力を感じました。しかしロックダウンが長期化するにつれてコロナに対する恐怖も薄れてきたのか、外出する人も増えてきました。

フィリピンは簡単に法律が変わるので、ロックダウン後に新しい法律ができて、マスクを付けずに外出したら逮捕されます。

しかし現状は大通りや人目に付く場所では皆マスクをしていますが、路地に入ると誰もマスクをしていないです。公共施設でもマスクとフェイスシールドを付けていないと入れないようになっていますが、フェイスシールドを持っているだけで入れてくれるので誰も付けていません。

ルールを守らない人を取り締まるという意識も薄れていっているのも感染者数がなかなか減らない原因なんじゃないかと思います。

あと、多分日本も似たような感じだと思うのですが、コロナやワクチンに関する都市伝説や陰謀論じみた話も最近よく耳にするようになりました。内容としては「コロナウイルスなんて実は存在しないデマである」「政府がお金のために感染者数を水増ししている」などです。

こういったデマ情報もワクチン普及が滞る要因となっているみたいです。

フィリピン行けるのはいつから?

冒頭でもお伝えしましたが、この話はあくまで予想となります。フィリピンへいつ渡航できるようになるかは中央政府が決めることなので、鵜吞みにせず参考程度に読んでくださいね。

僕の知人にセブの旅行業協会の方がいらっしゃるのですが、その方の話では、来年の4月までには観光客の渡航が再開されるのではとのことです。

苦戦してはいますが、フィリピン政府は今年中に国民の70%ワクチンを接種させる目標を掲げており、目標が達成でき次第、フィリピンの全ての経済活動を再開すると発表しています。全ての経済活動を再開するというのは、当然観光業も含まれています。

また、外国人観光客が落とすお金がフィリピン経済の大きな支えになっていたこともあり、海外からの観光客を受け入れなければフィリピンの経済は持たないだろうという話も聞きました。

以上の理由から、来年の4月までには観光客の渡航が可能になるのではと予想されます。

しかし、最近また感染者数が増加傾向にあり、7月26日からセブ市とその周辺では今月から酒類の販売が再度禁止。夜11時以降だった夜間外出制限が夜10時に変更されるなど、規制が強化されています。

デルタ株の感染者も増えてきていることもあり、この記事の予想通りになるとは限りませんが、1日でも早く以前のようにフィリピンと日本を自由に往来できる日が来ることを願います。